遺伝子検査サービスを行動変容理論と絡めた現状唯一?のSystematic Reviewだったのでサマリながら理解します。
(query:"behaviour change" AND "personalization"
)
論文を読む目的
- 行動変容理論を組み合わせた介入に関して雰囲気掴みたい
- 遺伝子検査を介した行動変容実現にはどのような課題が生じているか把握する
何をした論文か
- 遺伝子検査の介入による行動変容 (栄養、身体活動、睡眠、および喫煙) に関する研究論文の詳細で包括的な評価を実施
- 遺伝子検査を介した行動変容の介入に関する既存の研究では、理論的介入(TPB)の検討はほとんど行われておらず、介入の質としても低いことがほとんどであることを明らかにした
- 質の高い(RCT)研究では、遺伝子検査を介して行われた実用的な推奨事項の提供は遺伝情報のみの提供よりも、行動の変化を促進する可能性を高めていることを明らかにした
- 遺伝子検査を介した行動変容の介入においては、高品質の遺伝的介入が参加者に提供されることを保証する必要があり、研究デザインと分析においては計画行動理論(TPB)などの検証済みの理論を考慮するべきであることを提案した
先行研究と比較した優位点
- 遺伝子検査を用いた行動変容研究では、研究結果に大きな影響を与える可能性のある交絡因子を制御するために、検証済みの行動変容理論を考慮することが重要だが、既存の研究では検証済みの行動変化理論と遺伝的介入の質の評価を使用した説明は為されていない
- バイアスのリスクのみを評価する従来の体系的なレビュープロセスを使用するのではなく、バイアスのリスクを超えた要因(遺伝的介入の質、および理論的介入の検討(主に計画行動変容理論))が遺伝子検査と行動の変化に関連する研究結果に影響を与えることを実証した
追加の議論
- 遺伝子検査を通した介入には明らかに偏りがあり、多くの論文が質の「悪い」介入が行われていると評価された。大部分の研究において遺伝子検査を通した介入効果が得られなかったと報告されたのは、研究において参加者に高品質の介入を提供していなかったことが要因である可能性が高い
- 栄養、身体活動、喫煙習慣は複数の遺伝子介入研究で研究されてきたが、睡眠は遺伝学と行動変化の研究が不十分な領域のままである(本Systematic Reviewでhit数0件)。睡眠に関しては、血糖コントロール、過体重、肥満等との関連があることが既知の研究で明らかとなっている。健康転帰に影響を与える可能性のある遺伝子と睡眠の相互作用を決定していくようなアプローチが有効であると考えられる
その他メモ
- 健康リスクや生活習慣に関する個別化された情報と推奨事項を比較的低コストで提供するため、遺伝子検査は臨床現場を中心に使用されてきている。一方で、遺伝子検査が生活習慣の変化を促進するかどうかを評価する研究では、相反する結果が得られている
- 計画行動理論 (TPB) は、おそらく学界で最も広く受け入れられている行動変容理論。本理論では、行動への態度(attitudes)、主観的規範(subjective norms)、および知覚された行動制御(perceived behavioural control) が行動を予測するために使用できる重要な構成要素であると仮定している
引用:Theory of planned behavior - Wikipedia
読むべき参考文献
パーソナライズされた行動変容に関する研究を前進させるための重要な次のステップとして、TPB の観点からシステマティック レビューを完了することを推奨 Horne J, Madill J, Gilliland J: Incorporating the “Theory of Planned Behaviour” into personalized healthcare behaviour change research: a call to action. Pers Med 2017; 14: 521–529. (https://dx.doi.org/10.2217/pme-2017-0038)
計画的行動理論(TPB)に関して Ajzen I: The theory of planned behaviour: reactions and reflections. Psychol Health 2011; 26: 1113–1127. (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21929476/)