なんかただのエンジニアみたいなブログになってきたため、たまには生物学的なお話を。
遺伝子突然変異とは
呼んで字の如く、遺伝子上の塩基配列が変化することを指す。
生物学をあまり知らない人からは、単に遺伝子変異と呼ばれやすいかもしれない。
核・ミトコンドリア・葉緑体において、DNA、あるいはRNA上の塩基配列に物理的変化が生じることを遺伝子突然変異という。
突然変異 - Wikipedia
Wikipediaの定義上では、遺伝子上であるか否かに依らず、DNA、あるいはRNA上の塩基配列が変化すると、遺伝子突然変異と呼ぶらしい。
どうして遺伝子変異が起きるのか。
- DNA複製の際のミス
- 化学物質によるDNAの損傷および複製ミス
- 放射線照射によるDNAあるいは染色体の損傷
- トランスポゾンの転移による遺伝子の破壊
などが挙げられる。
喫煙によってがんになりやすくなるという話はよく知られているが、
これは煙草に含まれる発がん物質が突然変異を引き起こすためだ。
1年間毎日1箱の喫煙によって肺では150個の突然変異が蓄積するらしい。。
がんゲノムビッグデータから喫煙による遺伝子異常を同定|国立がん研究センター
遺伝子突然変異の種類
遺伝子変異は読んで字のごとく、ゲノム配列中の塩基が変わることで
以下のような区別があり、それらを区別する定義は曖昧極まりない。
- SNP
- SNPs
- SNV
- SV
- CNP
- CNV
それぞれ説明していく。
SNP (SNPs)
Single Nucleotide Polymorphismの略称で、日本語でいうと一塩基多型を指す。 WikipediaのSNPに関するページを見てみると、
SNPはSingle Nucleotide Poplymorphismの略とされているが、実際にこの用語が使用される場面では1塩基に限らず、2塩基から十数塩基程度の短い置換、挿入、欠失を含むデータを指している場合も多い。また、1%以上の頻度のものをSNPと呼ぶというルールも目安であり、現在では1%を閾値とする場合が多いが、5%が目安とされる場合もある。 一塩基多型 - Wikipedia
とあり、定義はとっても曖昧だ。
集団内のある閾値より多い頻度で変異が存在する個体が確認されている場合、それはSNPと呼ばれる。
複数のSNPを指す際には、複数形のSNPsという用語が使われることが多い。
SNV
Single Nucleotide Variantの略称で、日本語でいうと一塩基変異を指す。
SNVは個人間で観察される塩基配列の違いを指し示しており、
「ある個体とある個体でこういうSNVが存在する」といった使い方をされる。
SNPと異なり統計的な意味合いはなく、単に異なる塩基配列が存在することを指す。
SNVもSingleといいながら、一塩基の違いだけでなく小さな欠失・挿入も含めることが多い。曖昧だ。
SV
Structual Variantの略称で、日本語で言うと構造多型を指す。
染色体の構造を変えてしまう変異、という意味だ。
主なSVの種類としては、以下のようなものがある。
- insertion(挿入)
- deletion(欠失)
- tandem duplication(直列重複)
- inversion(逆位)
- translocation(転座)
これらの違いは変異の仕方によるものだ。
わかりやすいのは挿入と欠失で、前者は塩基配列中に別の配列が挿入されるような変異を、後者は塩基配列が消失するような変異を指す。
構造多型は自閉症やがん、アルツハイマー病といった疾患を引き起こす要因となることが知られていることから、研究が活発に進められている。
CNP (CNV)
Copy Number Poplymorphismの略称で、日本語で言うとコピー数多型を指す。
「コピー」という言葉からも想像できるように、同じ配列が何個もリピートしているような変異である。
遺伝子の“数の個人差。という意味であり、塩基配列の違いを指すSNPとは異なる。
CNVはCopy Number Variationの略称で、日本語で言うとコピー数変異を指す。
SNPとSNVの関係と同様で、特に集団のなかで1%以上の頻度を持つものをCNPと呼ぶのに対し、CNVには統計的な意味合いはない。
CNP (CNV) は通常は1Kbp以上のものを指しており、ここまで大きい変異だと染色体の構造変化を起こすため、SVの一つとされる。
変異の検出
ここまで説明してきたように、変異には種類が存在する。
疾患の研究などでは、これらの変異を見つけるために次世代シーケンサーが使用され、配列が読まれているのでした。
変異によって適切なシーケンサ、解析ツール等が存在します。
これらを使い分けるのがバイオインフォマティシャンの役目なのです。
バイオインフォマティシャン、すごいね!!